◆親知らずのトラブル 親知らずは、二番目の大臼歯のさらに奧に生える歯です。 歯ぐきから顔を出す年齢も人さまざま、一生一本も生えない人も珍しくありません。 この親知らずは、唾液の影響を受けにくくむし歯になりやすいこと、 歯ぐきに深い溝があって不潔になりやすく炎症を起こしやすいことなどから、 概して嫌われ者です。 また、手前の歯を圧迫して歯列を乱したり、手前の歯の歯根をだめにしてしまうこともあります。 もちろん、トラブルさえなければ、かみ合わせにとって大切な大臼歯です。 トラブルのない親知らずを抜く必要はありません。 ◆親知らずの痛み 親知らずの周囲が腫れるものを、智歯周囲炎と呼んでいます。 下あごの親知らずは、スペースの制約から完全に生えきらずに頭が出た状態になることが多く、 このために歯の周りにちょうど歯周ポケットと同じような深い溝ができて、 ここに細菌がたまって炎症を起こすことがあります。 半分歯ぐきに埋まったままでもプラークコントロールがちゃんとできていれば周囲炎は起こりません。 炎症の原因は細菌の増殖です。口唇を軽く閉じ、歯ブラシで口唇をこじ開けるように差し込むと、 親知らずも意外に簡単にブラッシングができます。プラークコントロールで智歯周囲炎は防げます。 ◆悪性腫瘍vs感染による炎症(膿) みなさんは悪性腫瘍、いわゆる癌の進行速度が速いというのはご存じだと思います。 ではその悪性腫瘍と感染による炎症(膿)ではどちらが進行の速度が速いのでしょうか? 答えは圧倒的に感染による炎症(膿)の速度のほうが早いです。 体の中にはいろいろな空間があります。 筋肉と筋肉の隙間、筋肉と骨の隙間などです。 感染による炎症(膿)はこの隙間を伝っていくことができるので、進行速度がとても速く、短時間で重篤化することがあります。 親知らずの感染が原因で起こるものの1つに下行性壊死性縦隔炎というものがあります。 また、首などの筋肉の隙間に感染による炎(膿)症が伝わり、腫れてしまうと気道を圧迫して呼吸ができなくなることもあります。 ◆親知らずの抜歯 半分あるいは全部歯ぐきに埋まっている親知らずがトラブルを起こしたときは、抜歯します。 骨に埋まった親知らずの抜歯は、周囲の骨を削る必要があり、 また骨と癒着していることもあるので、長時間かかることがあります。 ただの抜歯と軽く考えず、からだの調子が良く時間に余裕のあるときに経験豊富な専門家の処置を早めに受けましょう。